80歳だからできる医療がしたい―。白衣を捨て、血圧計と聴診器だけでなんでも診る医者、早川サン。薬は奥さんの点てる一服の茶。そんな早川サンの徒然日誌。
戦後の焼け野原で、みんなが5円、10円と集めて創った診療所。外科医だけど、くる人は誰でもみる。そして、“いつでも、どこでも、誰でも”医療にかかれる制度を目指して住民と力を合わせて運動に取り組み、20数年かかってようやく日本に皆保険制度が敷かれるようになった。次は、老人医療の無料化の運動に力を注いだ。戦後を生き抜いて今の日本を気付いたお年寄りに、畳の上で大往生してもらいたい―。人を大切にする思いがいっぱいあふれている一冊。
ひとつ例をあげてみよう。最近の医療は何かおかしい、という話。受付は機械、ろくすっぽ話も聞いてもらえず、薬は番号が表示されてばさっと投げ出される。
投げんでもいいのに…と思って窓口を診たら「投薬」と書いてあった。なるほど!……。
考えてみたらぼくら昔の古い医者もそうだった。
「センセイ、コノ薬、ナンに効くんですヤロカ?」
「お前が知ってどうするんやな。黙って飲んだらええのや!」
「センセ、病気はナンですカナ?」
「知らんでもええー。治るまで来たらいいんだ!」と言い放ってすましていた。この頃ようやく医者のごう慢さに気づいた。
申しわけなかった!病気は医者のものでなく患者さんのものだった。
とまぁこんな調子で楽しく話は続く。
「病気」は薬で治る病気だけとは限らない。ただひたすら聴くことが治療になることもあるし、末期ガンを看取るのも医療だ。病院やヘルパー、行政など、地域ネットワークを活かした医療で、皆が安心して「畳の上で大往生」できる社会を創れるとよいのだが。