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『凶笑面』 北森鴻 (新潮社)

 
異端の民俗学者 蓮丈那智。彫像のような美しさからは想像もつかない辛辣な口調、独立独歩、唯我独尊で、思いついたら即フィールドワークに行ってしまう。それだけならまだしも、行った先々で事件に遭遇してしまうわけで。
可哀相なのはそれに振り回される助手の内藤三國。いつも反論を試みつつも、那智に「ミクニ」と呼ばれただけで、蛇に睨まれた蛙のようにすくみ上がってしまって結局しおしおと従う羽目に。
そんな那智と内藤のフィールド・ファイル短編集その1。民俗学の話も面白いけれど、何よりミクニが虐められるのを見るのがだんだん楽しみになって読むのをやめられない。(笑)


作品中にちらほら登場する、那智の定期試験問題を紹介。
東経137度30分 北緯34度40分の付近の海上に南北5キロメートル 東西1キロメートルほどの小島を仮定する。住民80名ほどのA集落と70名ほどのB集落に、このたび民族調査を試みた。その結果非常に興味深い事実を得ることができた。
*この島には渡来神伝説、および浦島伝説に類する伝承が一切ない。このことについて可能な限りに仮説をあげよ

大阪における中流の、4人家族を想定する。
ある朝のこと、家の主人はすでに出勤。ぎりぎりの時間に目を覚ましたこの家の息子―推定高校1年生―が、朝食に納豆を発見した。納豆嫌いの高校生は激怒し、母親に向かって食卓をひっくり返して家出をした。
これは関西、特に大阪を中心として語られることの多い逸話である。がしかし、現実的にこうしたことが頻繁に行われるとは考えがたい。とするなら、この物語はごく限られた地域におけるステレオタイプの都市伝説であると推察することができる。では民俗学的なアプローチを用いて、この都市伝説を分析せよ

たしか他にも「ラーメンに浮かぶナルトについて民俗学的考察をせよ」みたいな問題もあったような気がする。学生も大変なら採点するミクニもかわいそうやわ…。

2008年08月30日 [ミステリ] by スオミ - No Trackbacks このエントリーを含むはてなブックマーク このエントリーをはてなブックマークに追加 342

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