著者のことば
警察官でもない人間が、なぜ事件の謎を解こうとするのか。
謎を解くことによって、いったい何を得ようとしているのか。
そんなことを考えていたら、このような物語ができあがりました。
本書には、事件を圧倒的な知性で解決する、いわゆる名探偵は登場しません。
友人の不審な死を目の当たりにしたとき、関係者の間には疑心暗鬼と敵対心しか存在し得ないのか。
この本に描かれているのは、そのようなことに懊悩する、普通の、けれど気高い人たちです。
この本を手に取ったすべての方が、登場人物の一人であると信じています。
わからない。セリヌンティウスには、メロスがどうやって帰ってきたのかがわからない。
「よく、『積み上げるのは時間がかかるけれど、壊すのは一瞬だ』って言うだろう? 僕たちの場合は逆だと思うんだ。僕たちがお互いに信じ合える関係になったのは、漂流というある意味一瞬の出来事が原因だった。そしてその信頼関係は、今夜壊れる可能性に直面している」…
「それなのに、僕たちときたら、お互いを全く疑っていない。…
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