自分は、結婚は、しないだろうと青葉は思っていた。「しない」ではなく「できない」といってもいい。「結婚」は、青葉からは遠くにあった。何億光年先から光だけを送ってくる星のようなものだった。
もとより、愛とメシがあれば生きていけると、いい張りたい口である。しかし、それが現実的ではないことも知っている。若く見えても三十女だ。身過ぎ世過ぎはある程度、済ませたつもりだった。金と妥協と打算は決して空くではないと思う。嘘も方便という言葉がけっこう好きだ。あと、水清ければ魚棲まず、とか。
それでもせっかく生まれてきたんなら、あなたとごはんがあればそれで充分としんからいえる男と一緒になりたいと思うところが青葉にはあった。はなからとっくに寄り添った互いの心持ちを追いかけるようにして、たったひとりの男と一生かけて、仲よくなっていきたいじゃないか。反面、だめか? こういうの、とも思っていた。流行らないか? 今。
「……ほんとう、になったからだと思う」
といったら、青葉の声が湿った。朔郎の笑声が聞こえてくる。無音だったが、青葉の耳にそれは届いた。
「おまえのそういうところが『買い』なんだな」
掘り出しものだ、と、朔郎がいった。
お互いにね、と、青葉が答える。
割れ鍋に綴じ蓋って説もあるけどな、と、朔郎がいい、合えばいいじゃん、と、青葉が答える。
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