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8月30日 (土)
『凶笑面』 北森鴻 (新潮社)
異端の民俗学者 蓮丈那智。彫像のような美しさからは想像もつかない辛辣な口調、独立独歩、唯我独尊で、思いついたら即フィールドワークに行ってしまう。それだけならまだしも、行った先々で事件に遭遇してしまうわけで。
可哀相なのはそれに振り回される助手の内藤三國。いつも反論を試みつつも、那智に「ミクニ」と呼ばれただけで、蛇に睨まれた蛙のようにすくみ上がってしまって結局しおしおと従う羽目に。
そんな那智と内藤のフィールド・ファイル短編集その1。民俗学の話も面白いけれど、何よりミクニが虐められるのを見るのがだんだん楽しみになって読むのをやめられない。(笑)
8月29日 (金)
『BG、あるいは死せるカイニス』 石持浅海 (光文社)
優しくて賢い、私の自慢の姉 優子さんが殺された。流星観測に行くといって深夜の学校に出掛けたきり、二度と会えなかった。…私は絶対に犯人を許さない。立ち直った妹 遙(ハルカ)は、親友の美紀と共に姉の死の謎を追い始める―。
高校生が主人公かと思いきや、実は世界設定が異色。この世界では、生まれたときはみんな女。生物として優秀な個体が男に変化するのだ。男性は人口の約1/4。女とのセックスは義務であり、複数の妻を持たねばならない。
8月28日 (木)
『アイルランドの薔薇』 石持浅海 (光文社)
石持浅海のデビュー作。電車で読んでいたのだけど、翌日は持ってくるのを忘れてしまい、続きが気になるあまりわざわざ本屋で立ち読みしてしまった。(苦笑)
北アイルランドの武装勢力NCFの副議長ダグラス・マクマホンが、南にあるスライゴーのB&Bで殺された。宿にいたのは、同行していたNCFのトムとデイブ、コークから来た会計士のビル、ダブリンからきた生化学研究員のジェリーとフジ、アメリカ人大学生のアリスとケイト、オーストラリアから花を売りに来たビジネスマンのケン。そして、宿の女主人メアリーと料理人のフレッド。その上、客の中にはNCFの依頼を受けた正体不明の殺し屋「ブッシュミルズ」が紛れ込んでいた。
増える死体、高まる緊張感。皆の精神が限界に来る前に犯人を突き止めなくてはならない―。本作の探偵役フジは後の作品の探偵役のように純化されていないけれど、石持作品の原形はここにあり、といった感。うーん、たまらんぜ。
8月24日 (日)
『Rのつく月には気をつけよう』 石持浅海 (詳伝社)
移動中に読むだけなら…と借りてきた連作短編集。ところがどっこい、やっぱり途中でやめるなんて無理なのであった。
学生時代からの飲み仲間、「悪魔的な頭脳を持つ」長江高明、「雑学博士の」熊井渚、「一升瓶を一気飲みできる」湯浅夏美。長江のマンションで開かれる飲み会も、マンネリはつまらんということで、毎回誰かがゲストを連れてくる。そのゲストの話で盛り上がるのだが…。
会話のほんのわずかなとっかかりから推理をふくらませる、これも石持浅海らしいミステリ。そして、最後の最後まで魅せてくれるところも憎らしい。
8月18日 (月)
『水の迷宮』 石持浅海 (光文社)
三年前不慮の死を遂げた、水族館の飼育係 片山の命日。複雑な気持ちを抱える職員や関係者が集まる水族館で、展示生物への攻撃が始まった!次々と襲われる水槽、人を食ったようなメール、そしてついに殺人が―。来館者8500人を人質に取られた職員達は、水槽を守りながら謎の攻撃と対峙する覚悟を決めるが…。
8月17日 (日)
『月の扉』 石持浅海 (光文社)
善良な市民3人組がハイジャック。要求は、逮捕された彼らの「師匠」を2時間後に空港まで「連れてくる」こと。ところが、そんな大事なときに、機内のトイレで死体が―。ハイジャックで手が離せない3人の代わりに、真相究明を命じられた「座間味くん」。2時間で彼は犯人を見つけられるのか?
これまた面白すぎ!きっと、限られた場所、限られた時間、限られた容疑者という状況での謎解きが、石持浅海の持ち味なのだろう。またノンストップで読み切ってしまった。ほんと、石持浅海は「電車に乗ってる間だけ読む」なんてことは無理なのだ。
8月15日 (金)
『君の望む死に方』 石持浅海 (祥伝社)
『
扉は閉ざされたまま』の続編をようやく入手。これもたまらず一気読み。
ガンで余命6か月と宣告された会社社長 日向(ひなた)は、社員 梶間に殺されることにした。熱海の保養所での“お見合い”社員研修を復讐の舞台に用意し、あとは梶間の殺人実行を待つばかり、のはずが…。
『扉は〜』の安東章吾と碓氷優佳が登場。そして、気になっていた優佳とあの人のその後もちらり。『扉は〜』よりは安心して楽しく読める―というとおかしいけど(殺人なんだし)―のは、たぶん優佳の演じるキャラクターが明るいからだと思う。ただ、その明るさが全て計算されたものだということを、『扉は〜』の読者なら警戒しているし、そうでない者も、最後に知ってぞくりとするに違いない。
『顔のない敵』 石持浅海 (光文社)
対人地雷をテーマにした短編集。地雷反対イベントで、爆発するはずのない処理済み地雷によってNGOメンバーが爆死したり、地雷開発会社の倉庫の中でハンマーの罠に掛かって人が死んだり、東京のどこに仕掛けられたのかわからないトラバサミを探したり…。時間が前後しながらも登場人物は少しずつ重なっていて、いろんな人がアームチェア・ディテクティブ役を演じる。前の物語では被害者だった人や、犯人だった人が。ひとつひとつの作品はミステリとしては軽いけれど、全体としては、そのテーマ故に重く暗い雰囲気に彩られている。ただ、だからこそ、小さな希望が輝いて見えるのだけれど。
8月14日 (木)
『これでもガマン?!労働弁護士の事件ノート』 (青木書店)
リストラや賃金切り下げ、パート差別やSE派遣事件など、東京法律事務所が取り扱ったいろいろな労働事件について書かれている。
…けど、あんまり面白くありませんでした。記述に物語性はあまりないし、結論はたいてい「本人と労働組合がよく頑張った!我々はお手伝いしただけ」みたいな感じで、つまり困ったら労働組合に入ってね、ってことですか?と。判例について長々書いてあるところもあるので、もしかしたら労働法を知ってる人が読むことを考えて書かれたのかもしれないけど、それにしては中途半端というか…。ターゲットのよくわからない自己満足的な印象を受けました。
8月 6日 (水)
『債権回収最前線』 中川剛毅 (中央公論新社)
図書館でふと手にとった一冊。
新聞記者であった筆者が、株式会社整理回収機構(RCC)における債権回収に密着取材して、RCCの社内誌に掲載していたものをまとめた本。病院や老舗旅館、ゴルフ場の再建や、バブルで多額の借金を負った個人からの取り立て、「俺は治外法権」と豪語するアウトロー債務者との闘い、占有屋ヤクザ掃討作戦など、未知の世界を垣間見ることができる。
文章は、読みやすいけれどテンポがよくないのがちと残念。新聞記者だからなのかな。
8月 1日 (金)
『震度0』 横山秀夫 (朝日新聞出版)
神戸で大地震が起きた朝、N県警の警務課長の不破が失踪した。長官を目指す自分のキャリアに傷が付くことをおそれ、早期秘密裏に処理しようとする本庁エリートの警務部長 冬木(コドモ部長)、同じキャリアでありながら10も年下の冬木に嫉妬し、自分の威厳を保ちたい本部長 椎野、自分の天下りポストを守るために刑事部で処理したい地元生え抜きの刑事部長 藤巻、キャリアに取り入るのに必死の交通部長 間宮(マシュマロマン)、色男の生活安全部長 倉本(電話魔)。それぞれ自分が走査の優位に立つために戦いを繰り広げる。それに官舎住まいの妻達も加えての情報戦。そんな中、ただひとり震災に心を痛め、神戸震災の情報収集と応援派遣の準備に全力を尽くす準キャリアの堀川は、不破を本気で心配するただ一人の幹部でもあった…。
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