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3月26日 (金)

『夏のレプリカ』 森博嗣 (講談社)


萌絵の同級生 簑沢杜萌は、二年ぶりに帰省した実家で仮面の誘拐者に捕らえられ、一足先に誘拐された家族のいる別荘へ連れて行かれる。ところが、誘拐犯は何者かに殺され、実家にいたはずの盲目の兄は行方不明に…。『幻惑と死と使途』と同時期に起こった事件を描く、偶数章だけのミステリ。S&Mシリーズ第7弾。
萌絵と杜萌のチェスで彩られる、ミステリというよりは残酷な童話のような物語。タイトルの「夏のレプリカ」― REPLACEABLE SUMMER ―の意味はまだ私にはよくわかりません。ただ透明な哀しさだけが残る杜萌の夏。それは本物の夏ではなかったということなのでしょうか…。
家族って、テレビのリモコンのように、だんだん非接触になっていく。どこまで遠く離れれば、スイッチがつかなくなるのか…。それを試そうとする子供のように、みんな、離れていく。
誰でも、そう。離れていく。
(きっと、もう戻れない…)

3月22日 (月)

『幻惑の死と使途』 森博嗣 (講談社)


「一度でも、私の名を叫べば、どんな密室からも抜け出して見せよう。私は、必ずや脱出する。それが、私の名前だからだ。」
稀代のマジシャン有里匠幻が、野外の湖で脱出マジックの最中、衆人の前で殺された。さらに、葬儀では彼の遺体が消失する。いったい誰が仕掛けたのか?どこまでがマジックなのか?
またもや萌絵は危機一髪で犀川に助けられるS&Mシリーズ第6弾。

この作品には、奇数章しかありません。第1章の次は第3章、その次は第5章...といった具合です。理由はお読みいただければわかりますが、気付かなくても問題はありません。そんな些末なことは脇に置いて、華麗なマジックに目を奪われてください。
「まったくそのとおりだ。本人の人格を汚すことは不可能だ。どんな法律も、人格を裁くことはできない。名前を裁くんだよ」

3月19日 (金)

『封印再度』 森博嗣 (講談社)


旧家、香山家に代々伝わる家宝「天地の瓢(こひょう)」と「無我の匣(はこ)」。「匣」の鍵が「瓢」に入っているが取り出せないという、まるで知恵の輪パズルのようなこの一組の家宝が、二代続けて同じ状況で死んだ当主の前に置かれていた…。自殺か?他殺か?目的のためには手段を選ばない西之園萌絵と、珍しく積極的に事件に関わる犀川の、S&Mシリーズ第5弾。

“WHO INSIDE”というサブタイトルの付いたこの作品、タイトルも謎も洒落ていて、S&Mシリーズ中でもかなり気に入っています。国枝桃子助手の「ごちそうさま」発言や、萌絵の叔母 佐々木睦子の「貴女…、私と区役所と、どっちが偉いと思っていて?」発言など、脇役がたまらない魅力を発揮しています。ちなみに、ラスト近くで瀬戸千衣(せとちい)が登場します。漫画家だが毎日どこかへ出勤していくという彼女の夫って、誰なんでしょう?

美しいとビューティフルは、全然違う意味じゃないかな。きっと、綺麗な夕日を見て、ああ死にたいって思ってしまうんだ。しかもそれが全然悲壮じゃない。どうして、こんな綺麗な感情ができたんだろうね?

3月13日 (土)

『有限と微小のパン』 森博嗣 (講談社)


ちょっと飛んで、S&Mシリーズ10作目。『四季 秋』を読む前に読んでおかなくては…と思い、間をすっとばしてしまいました。
一度目に読んだときも圧倒されましたが、二度目に読んでもやっぱりすごいと思いました。からくりは覚えていたので、あっと驚くということはありませんでしたが、その代わり、シリーズを短期間で再読してきているせいで世界をイメージしやすく、思考の通奏低音もききとれ、全体から細かいところまで味わえました。ラスト近くの、海辺での夜明けは、切なくて清々しくて…。思考を極限にとばしたら透明に輝くのかな…なんてことをぼーっと考えてみたりみなかったり。
でも、IPが255ってないよなぁ?(笑)

(あらすじ)
日本最大のソフトメーカー「ナノクラフト」の大口株主である西之園萌絵は、社長 塙理生哉(はなわりきや)に招待されて長崎のテーマパーク「ユーロパーク」へやってきた。ゼミ旅行に合流する前に洋子&愛とユーロパークを楽しむはずが、萌絵の前に真賀田四季が現れ、次々と殺人が起きる…。

3月 7日 (日)

『ダレカガナカニイル…』 井上夢人 (講談社)


たまたま本屋で見かけて手に取りました。
井上夢人は初めて読みます。彼は「岡嶋二人」という二人組の一人として活動後、この『ダレカガナカニイル…』でソロデビューしたとのこと。実は、岡嶋二人も読んだことがありません。ただ、印象的な表紙の絵と、裏表紙のあらすじに惹かれました。
《ここはどこ?あなたはだれ?》と訴える声の正体は何なのか?ミステリー、SF、恋愛小説、すべてを融合した奇跡的傑作!
一度はそのまま通り過ぎたのですが、後日、やっぱり読んでみよう!と。(笑)

(あらすじ)
なんとなく生きている主人公28歳、警備をしていた新興宗教団体の火事の日、突然頭の中に誰かの意識が飛び込んできた。意識を追い出す方法を探るうち、出火の謎に巻き込まれ…。
はじめは病院にいる主人公の独白として始まるのですが、いつの間にかそんなことは忘れ、物語に引き込まれていることに気付くでしょう。

なお、筆者のWEBサイト夢人.comで井上夢人と岡嶋二人の作品の冒頭部分を立ち読みできます。

3月 6日 (土)

『詩的私的ジャック』 森博嗣 (講談社)


N大8年生(もう卒業不可)でロック歌手の結城稔。彼の曲の歌詞に見立てられた連続密室殺人事件が起きた。被害者はいずれも結城稔の熱狂的ファンだ。密室の目的は何か?死体に残された文字上の傷跡は何を意味するのか?S&Mシリーズ第4弾。

この作品は、以前新書で読んだときよりもずっと好ましく感じました。トリックも犯人もなんとなく記憶にあるためか、人物の魅力というか心理というか、そういうものを味わう余裕がでたのでしょう。製図で徹夜だといいつつも事件に首をつっこむ萌絵、中国に出張中で帰ってきても事件に無関心の犀川。稔と正反対の兄 寛(大学院生、ミステリ研OB)とその妻千佳(助手)、稔のマネージャ篠崎(ミステリ研OB)、萌絵のクラスメイト牧野洋子と金子くん…。主要キャラからちょい役まで、みな惹きつけられる個性を持っています。しょっぱなから死体で登場する女子大生2人は別として、ですが。森作品ではいつも被害者の描写が少ないですね。たぶん、動機に重きをおいていないせいでしょう。それは、犀川先生の言葉に集約されます。
「動機なんて、本当のところ、僕は、聞きたくもないし、聞いても理解出来ないでしょう。それに、本人だって説明出来るかどうか…。こんな欲望が、言葉に還元出来るものでしょうか?他人に説明できて、理解してもらえるくらいなら、人を殺したりしない。そうではありませんか?」

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