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3月 4日 (木)
『笑わない数学者』 森博嗣 (講談社)
偉大な数学者、天王寺翔蔵博士の住む「三ツ星館」は、博士の娘婿 片山基生がデザインした、オリオン座をモチーフにした前衛的な建築。そこでのクリスマスパーティの夜、博士は庭にある大きなオリオン像を消してみせた。12年前にも一度提示され、誰も解けなかった問題だ。一夜明けて再びオリオン像が現れた時、2つの死体が発見される。オリオン像消失の謎と、殺人事件の謎。2つの謎に犀川と萌絵が挑む(そんな積極的なのは萌絵だけだが)、S&Mシリーズ第3弾。
トリックや謎解きだけに注目するなら、そう傑出した作品ではない。しかし、哲学や数学(というカテゴライズも実は無意味だと思うが)についての思考を軽く楽しむにはよい作品であると思う。
数学をやったことのある人は、「定義する」ということが身に染みているはずだ。距離にしても演算にしても、定義によって空間や集合の性質が変わる。そんなことはわからん、という人も、たまには「自分の世界は自分が定義しているのだ」ということを再認識するのもいいのではないか。
ついでにいうと、文庫本の解説は数学者
森毅先生。面白みのない趣向だなぁ、と苦笑してしまった。
最後に、この作品で提示されている問題を一つ。
五つのビリヤードの玉を、真珠のネックレスのように、リングにつなげてみるとしよう。玉には、それぞれナンバーが書いてあるな。さて、この五つの玉のうち、幾つ取っても良いが、隣どうし連続したものしか取れないとしよう。一つでも、二つでも、五つ全部でも良い。しかし、離れているものは取れない。この条件で取った球のナンバーを足し合わせて、1から21までのすべての数ができるようにしたい。さあ、どのナンバーの玉をどのように並べて、ネックレスを作ればよいかな?
解答は本には載っていません。煙草2本分で解ければ犀川先生並。(笑)
2月28日 (土)
『冷たい密室と博士たち』 森博嗣 (講談社)
S&Mシリーズ第2弾。犀川の悪友、喜多のいるN大工学部極地環境研究所の低温度実験室でおきた密室殺人事件。犀川、萌絵、喜多がそれぞれの思考で真相に迫る。
「森らしくない」とか「インパクトがない」などと言われて評価が低いようですが、私はそうは思いません。確かに妃真加島の研究所に比べれば極地環境研究所センターは色彩的に地味だし、ハイテクなセキュリティシステムがあるわけでもないし、登場人物も教授、助手、大学院生に事務員といったまともな人たちです。トリックだって、天才真賀田四季の15年をかけたトリックと比べて地味なのは当たり前ではありませんか。でもそれは、「単純」とは違います。しっかりと練られた、美しいトリックなのです。
この本を読んだ後にすぐまた読み返したくなる人はほとんどいないでしょうが、実のところ、伏線があちこちに張られています。それに気が付いた人は、きっと喜多先生と同じような思考で真相に至るに違いありません。
最後に、犀川先生の言葉を。
「社会に出て、大人になって、数学が何の役に立つのでしょうね?」
「犀川先生なら、どう答えられますか?」
「何故、役に立たなくちゃあいけないのかって、きき返す」
2月20日 (金)
『すべてがFになる』 森博嗣 (講談社)
新書版の発売が1996/04とあるので、これを初めて読んだのはもう8年近く前ということになります。言わずとしれた、森博嗣のS&Mシリーズ第1作。8年という時間がそうさせるのか、『四季』を読んだ後だからなのか、前回に読んだときとは微妙に感じ方が違うような気がします。とはいっても、前回どう思ったかなんてことは覚えていません。それどころか、ストーリーだってうろ覚えでした。
不思議なことに、一番よく覚えていたのは、ウェディングドレスを着た死体でもなく、仮想の街を走るRVカートでもなく、学生たちが港で船を待っている風景でした。どうしてなのかさっぱりわかりません。人間の記憶はとっても偏っているという一例でしょうか。
余談ですが、文庫版の解説は瀬名秀明氏。この解説もまた読み応えアリです。
2月14日 (土)
『虚空の逆マトリクス』 森博嗣 (講談社)
全7編の短編集。久しぶりに森作品を堪能しました。短編集といえど、このひとつひとつの作品が長編に劣らぬ面白さです。特に、「話好きのタクシードライバ」は傑作。みごとにやられました。「不良探偵」や「探偵の孤影」もなかなか。「ゲームの国」では、登場人物がやたらと回文を作ります。ちょうどこれを読んでいるとき電車が駅に着いたのですが、階段を下りながら「階段、問題か...」なんて、ついつい回文を考えてしまいました。最後の「いつ入れ替わった?」はS&Mシリーズです。ともかく、ひとつひとつの作品の登場人物が非常にユニーク。非常に満足の一冊でした。
トロイの木馬
赤いドレスのメアリィ
不良探偵
話好きのタクシードライバ
ゲームの国(リリおばさんの事件簿1)
探偵の孤影
いつ入れ替わった?
1月18日 (日)
『脳男』 首藤瓜於 (講談社)
やっとつきとめた連続爆破犯 緑川のアジト。そこには先客がいた。過去も心ももたない鈴木一郎だ。彼に命を救われる形になった刑事 茶屋はしかし、鈴木一郎を共犯として逮捕、緑川は逃走する。精神鑑定を依頼された医師 真理子は、鈴木一郎の秘密を追ううちに、入陶大威(いりすたけきみ)という人物にいきあたるが…。
題名に惹かれて手にとりました。脳男 鈴木一郎は、かなり面白い設定です。後半の盛り上がりに欠ける気がしますが、ラストは納得。途中、ショーン・コネリー&キャサリン・ゼタ=ジョーンズの
『エントラップメント』を髣髴とさせるシーンがありました。
あと、登場人物が不思議な名前の人が多いな、という印象。(笑)
12月15日 (月)
『天井裏の散歩者』 折原一 (角川文庫)
推理小説界の手塚治のごとき存在、小宮山泰三。彼の住まう古いアパート「幸福荘」は、彼を慕って集まってくる小説家志望の若者や評論家たちで賑わい、いつも入居待ちがたくさん。幸運にもそこに入居できることになった青年は、部屋で奇妙なフロッピーを見つける。ワープロに入れてみると、そこには6つの短編連作が…。
これはすごいです。一気に最後まで読みきってしまいました。途中で止めることなんかできません。逆転につぐ逆転。いったい何が現実で何が創作なのか?!
あなたは、真実を、見抜けますか?
関係ありませんが、折原一はせんべい布団を簀巻でのりまきを巻くようにくるくると丸めるのが好きなんでしょうかね?『失踪者』でもそんなくだりがあったような気がするのですが…。
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yunpyon : 鈴木一郎のファンです。 だんだん、人らしい感情を持ってくるの...
スオミ : >続けて書いてください。 というのは、首藤瓜於さんに対しての...