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『夫婦一年生』 朝倉かすみ (小学館)

 
目には青葉―。
青葉と朔郎は新婚ほやほやである。とはいえ、お互い三十路、キラキラした関係ではない。でも、初々しさを楽しみつつ、「夫婦」というものに馴染んでいく二人の姿はほほえましい。勇ましいけれど、カワイイとこもある青葉。嫁と姑の闘いもひと味違う。
ドラマみたいにカッコよくはないけれど、その辺にありそうな「夫婦」。この後の二人がなんだか楽しみになってくるような、ふんわかした気持ちになる小説。こんな結婚ならアリかもしれない。…いや、私はないな、やっぱり。(笑)
自分は、結婚は、しないだろうと青葉は思っていた。「しない」ではなく「できない」といってもいい。「結婚」は、青葉からは遠くにあった。何億光年先から光だけを送ってくる星のようなものだった。
もとより、愛とメシがあれば生きていけると、いい張りたい口である。しかし、それが現実的ではないことも知っている。若く見えても三十女だ。身過ぎ世過ぎはある程度、済ませたつもりだった。金と妥協と打算は決して空くではないと思う。嘘も方便という言葉がけっこう好きだ。あと、水清ければ魚棲まず、とか。
それでもせっかく生まれてきたんなら、あなたとごはんがあればそれで充分としんからいえる男と一緒になりたいと思うところが青葉にはあった。はなからとっくに寄り添った互いの心持ちを追いかけるようにして、たったひとりの男と一生かけて、仲よくなっていきたいじゃないか。反面、だめか? こういうの、とも思っていた。流行らないか? 今。

あぁ、なんだかこの口調、とある友人を思い出してしまった。彼女がこんな風に考えているのかどうかは知らないが、とにかく私の中で彼女は青葉的何かになったのだ。
「……ほんとう、になったからだと思う」
といったら、青葉の声が湿った。朔郎の笑声が聞こえてくる。無音だったが、青葉の耳にそれは届いた。
「おまえのそういうところが『買い』なんだな」
掘り出しものだ、と、朔郎がいった。
お互いにね、と、青葉が答える。
割れ鍋に綴じ蓋って説もあるけどな、と、朔郎がいい、合えばいいじゃん、と、青葉が答える。

あぁ、青葉をこんな風にかわいくしてしまう朔郎って、なんていいヤツなんだ。これなら青葉をくれてやってもいい。青葉的何かな私の友人もくれてやる!

2008年10月12日 [小説] by スオミ - No Trackbacks このエントリーを含むはてなブックマーク このエントリーをはてなブックマークに追加 573

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