偉大な数学者、天王寺翔蔵博士の住む「三ツ星館」は、博士の娘婿 片山基生がデザインした、オリオン座をモチーフにした前衛的な建築。そこでのクリスマスパーティの夜、博士は庭にある大きなオリオン像を消してみせた。12年前にも一度提示され、誰も解けなかった問題だ。一夜明けて再びオリオン像が現れた時、2つの死体が発見される。オリオン像消失の謎と、殺人事件の謎。2つの謎に犀川と萌絵が挑む(そんな積極的なのは萌絵だけだが)、S&Mシリーズ第3弾。
トリックや謎解きだけに注目するなら、そう傑出した作品ではない。しかし、哲学や数学(というカテゴライズも実は無意味だと思うが)についての思考を軽く楽しむにはよい作品であると思う。
数学をやったことのある人は、「定義する」ということが身に染みているはずだ。距離にしても演算にしても、定義によって空間や集合の性質が変わる。そんなことはわからん、という人も、たまには「自分の世界は自分が定義しているのだ」ということを再認識するのもいいのではないか。
ついでにいうと、文庫本の解説は数学者
森毅先生。面白みのない趣向だなぁ、と苦笑してしまった。
最後に、この作品で提示されている問題を一つ。
五つのビリヤードの玉を、真珠のネックレスのように、リングにつなげてみるとしよう。玉には、それぞれナンバーが書いてあるな。さて、この五つの玉のうち、幾つ取っても良いが、隣どうし連続したものしか取れないとしよう。一つでも、二つでも、五つ全部でも良い。しかし、離れているものは取れない。この条件で取った球のナンバーを足し合わせて、1から21までのすべての数ができるようにしたい。さあ、どのナンバーの玉をどのように並べて、ネックレスを作ればよいかな?
解答は本には載っていません。煙草2本分で解ければ犀川先生並。(笑)