アムンセンに南極到達を先んじられ、帰還の途中で全滅した悲劇のスコット隊。数少ない生存者である元隊員のガラードが綴った凄絶な記録です。
ずっと前に買って途中まで読んだまま放置してあったのをあらためて読み返してみました。以前はあまり面白く感じなかったのですが、今回は、面白いというとちょっと違うのですが、感じるところがありました。
マイナス20℃で暖かいと感じるような南極大陸を、ソリをひいて旅する一行。その日常が隊員の日記などで生々しく描かれています。嵐のために動けなかったり、手違いがあったりで、食料も乏しく、油にも事欠くような帰路。凍傷などは茶飯事で、足が倍の太さに腫れ上がってもひたすら歩き続けるしかなく、けれど、死ぬ間際まで愚痴一ついわずに明るく振る舞い続ける隊員たち。
そんな彼らの旅に比べたら、私の日常に耐えられないことなんかあるはずないじゃないか――。
こんな気持ちは、数日経てばすぐ消えてしまうのかもしれないけれど、そう思ったことだけでも覚えておきたい。
われらは彼の勇敢なりしことを誓言しうる。彼は数周の間、一言の不満をいわず、非常なる痛苦に耐えしのび、しかも最後まで余事を談ずるの余裕と意欲を堅持せり。彼は最期のきわまで希望をすてず、すてようとはせざりき。敢為なる精神の人なりき。その最期は次のごとし。最後の日の前夜、彼は再びさめることなき睡眠を望んで寝につきしが、翌朝――昨日また目をさませり。時に疾風強し。彼は「外に出てしばらくすごしたし」といい、疾風のなかにいで去り行きて、ついにふたたびその姿を見ることなかりき。