親の七光りでやりたい放題の寺島(バカ息子)にたわむれで妻を殺された鈴木は、復讐を誓って寺島(親バカ)の非合法的会社「令嬢(フロイライン)」に社員として潜入。とはいうものの、はなっから疑われてナサケナイありさま。
ところがちょうどそのとき、寺島(バカ息子)が目の前で交通事故に遭う。「あれは押し屋に押されたんだ、アイツを追え!」と上司に命令されて、ふらふらと後を追う鈴木…。
一方、脅されるわけでもないのになぜか彼の前ではみな自殺せずにはいられないという、変な能力を持つ自殺屋「鯨」。自分が自殺させた亡霊たちに悩まされながら、今日も政治家の秘書を自殺させた…。
さらに、女子供おかまいなし、一家惨殺が得意分野という殺し屋「蝉」は、今日も得意のナイフでめった刺し…。
・・・・・・正直なところ、読み始めたときはすごい描写が次から次へと休む間もなく展開し、くらくらして読むのが辛かったです。これが伊坂幸太郎なのか?!って。だけど、「きっとこのあとカタルシスがあるんだ、ハッピーエンドがあるんだ」と信じて読み続けました。
はじめはバラバラな三者の物語だったのが、読んでいくうちに、ひとつの方向へ向いて流れていることに気がつき、そして、ラストへ・・・。
でも、最後に残ったのはカタルシスでもハッピーエンドでもありませんでした。もう、ただ、茫然。
たぶん、これは、幻覚の物語なんだと思います。亡霊に悩まされる鯨、自分が操り人形のように思えてしまう「蝉」・・・。誰もが、幻覚の世界と紙一重で生きている。そんな鬱々とした物語でした。
「それに危機感ってのは、頭では分かっていても、意外に実感を伴わないものだからね」
「どういうことだ」短髪の鼻が、前を向く。
「大丈夫だと思っちゃうんだ」比与子が笑う。「いくら危ない状況にいてもね、たぶん大丈夫だろう、って思うもんなんだって。危険、と書かれた箱だって、開けてみるまでは、『それほど危険じゃないだろう』って高をくくってるわけ。指名手配版がパチンコ屋に行くのと同じ心理だよ。まあ大丈夫じゃねえか、って考えてるわけ。急に、大変なことにはならないだろう、って。危険は段階を踏んで訪れると、思い込んでるわけ」