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『柔らかな頬』(上・下) 桐野夏生 (文春文庫)

 
柔らかな頬 上柔らかな頬 下
お互いの家族の目を盗んで逢い引きするために、北海道・支笏湖の別荘へやってきたカスミと石山。ところがそこでカスミの娘・有香が神隠しのように消えてしまった――。
罪悪感にさいなまれながら娘を探し続けるカスミ。4年経っても現実を受け入れられない彼女の前に、「娘さんを探す手伝いをする」と申し出た元刑事・内海が現れたが・・・。

これはミステリのようでミステリではない。とにかく最後までやめられず一気に読んでしまったけれど、決して楽しい小説ではない。故郷を捨てたカスミの一生を、何不自由ない暮らしから転落した石山の変化を、確実に死に近づきつつある内海の心をなぞる作業だ。

解説で福田和也氏は桐野夏生の小説世界を
救いがない。救済というようなごまかしを、一切振り捨てたところから氏は書き出している。
と評しているが、まさにこの小説もその通りの作品だ。だから、読み終わった私の心も救いようのない無常感に捕らわれる。このまま生きて何になるのかとさえ思う。
何よりも厄介なのは、救いがないということではなく、救いがなくても人間は生きてしまうということであり、時にそのほうが人間にはふさわしく見えてしまうということだろう。

2005年09月27日 [小説] by スオミ - No Trackbacks このエントリーを含むはてなブックマーク このエントリーをはてなブックマークに追加 2517

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