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『終末のフール』 伊坂幸太郎 (集英社)

 
仙台の郊外を舞台にした連作短編集。設定を先に見てもこの作品の魅力は衰えたりしないと思うけれど、それでもやっぱりAmazonの説明なんか見ないで読んで欲しいと思う。一作目を読めば物語設定は明かされるけれど、私にとってはその一作目こそが一番心に響いたのであって、それは設定や書評を読んでなかったこととは直接関係はないだろうけど、それでも、真っ白な状態で読んでよかったな、と思うから。

【収録作品と主人公+α】

「終末のフール」
香取老夫婦と、10年ぶりに戻ってきた娘の康子

「太陽のフール」
超優柔不断な男 桜庭と、元同級生の土屋

「籠城のビール」
復讐に燃える兄弟と、その対象 アナウンサー杉田

「冬眠のガール」
美智のセリフより
「本って、お風呂の黴と一緒で、放っておくとどんどん増えていくから困っちゃうんだって」

「実はわたしが読んだ本に、確かビジネス書だったと思うんですけど、書いてあったんです。『新しいことをはじめるには、三人の人に意見を聞きなさい』って」
「三人?」
「そうなんです。まずは尊敬している人。次が、自分には理解できない人。三人目は、これから新しく出会う人」

「鋼鉄のウール」
キックボクシングジムに通う16歳少年、憧れの先輩苗場のインタビューより
「俺は、俺を許すのか?って。練習の手を抜きたくなる時とか、試合で逃げたくなる時に、自分に訊くんです。『おい俺、俺は、こんな俺を許すのか?』って」

「天体のヨール」
矢部の回想シーンより(二ノ宮のセリフ)
「お金っていうのはさ、有意義な研究じゃなくて、面白そうな研究とか役に立ちそうな研究に集まるんだ」
「『役に立ちそう』と『有意義』は同じ意味だろ」
「矢部君、本気で言ってるの?」彼はまた言った。「全然、違うって。役に立つ、のと役に立ちそう、というのは別物だよ。偉い人と、偉そうな人ってのが全然違うのと同じでさ。役に立つように見えれば、いいだけなんだよ。だから、科学者はいつも、危険を煽るんだ。…」
「そういうものか」
「軍隊とか諜報機関が、危険だ危険だ、って叫ぶのと一緒。危険を煽って、予算をもらう」

「演劇のオール」
日常で一人数役をこなす元劇団員 亜美

「深海のポール」
ビデオ屋 渡部、『生きる道があるかぎり、生きろ』という言葉について説明する土屋
「他人を蹴落としても、無我夢中で生きるわけだ」
私は顔をしかめた。「気の利いた言葉かな、と思ったら、何だか嫌な、生々しい話ですね」
「そりゃ、そうだ。これは嫌な、生々しい話なんだ」

2006年10月26日 [小説] by スオミ - No Trackbacks このエントリーを含むはてなブックマーク このエントリーをはてなブックマークに追加 4844

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