「ぼんやり生きてちゃだめだぞ。一生懸命勉強して、他人のことを思いやって生きていれば、自ずといろいろなことがわかってくる。人間というのは、その人にしか果たせない使命というものを持っているものなんだ。誰もがそういうものを持って生まれてきてるんだ。俺はそう思ってるよ」
手術の前日そう言った父は、二度と帰ることはなかった…。中学生のとき真性弓部大動脈瘤で父を亡くした氷室夕紀は、ある決意を秘めて医者になる。そして帝都大学病院の研修医として研鑽を積んでいたある日、病院へ脅迫状が届いた。
「医療ミスをすべて公表して謝罪せよ。さもなくば病院を破壊する」
夕紀、脅迫者、七尾刑事、そして彼らをとりまく人々も皆、それぞれが自分の使命に迷い、そして向かい合う―。
これも、忘れた頃に順番がまわってきた図書館予約本シリーズ。主人公が心臓血管外科で研修中とあって、のっけから冠動脈バイパス術だのOPCABだのという医療用語が並びますが、私はちょうど医療に興味が湧いていたところなので、うきうきと読み始めました。
ひとつひとつが本格小説になりそうな重い話をさらりとまとめています。とはいえ、逆に物足りなさも残るのですが、それを清々しさに変えてしまうあたりが東野圭吾の魅力か。