HOME > 『重耳 (上・中・下)』 宮城谷昌光 (講談社)
« 『チームバチスタの栄光』 海堂尊 (宝島社文庫) | 『孟夏の太陽』 宮城谷昌光 (文藝春秋) »

『重耳 (上・中・下)』 宮城谷昌光 (講談社)

 
春秋の五覇の一人、晋の文公の物語。
重耳の祖父、称は曲沃(きょくよく)の君である。当時、晋は翼(よく)と曲沃に分かれており、翼を伐つことが称の悲願であった。翼の君を3代にわたって伐ち、ようやく翼を滅ぼした称は、死後 武公と呼ばれる。(このへんまで上巻)
称の太子 詭諸には、申生、重耳、夷吾をはじめ幾人もの公子がいたが、驪戎を伐った際に得た族長の娘、驪姫に惑わされ、驪姫の息子を太子にするべく公子を殺そうとする。重耳や夷吾は逃げ出したが、親孝行すぎる太子 申生は最後まで詭諸に逆らうことなく死ぬ。(このへんまで中巻)

一方重耳は母の故郷 狐氏へ身を寄せたが、管仲の訃報を聞き斉へ向かう。斉で桓公に歓待され、その後を継いだ孝公には卿になってくれとまで言われて重耳はその気になるが、そんなことをしたら晋の君主になることができなくなる!と慌てた家臣らは、重耳を酔い潰して彼を抱え、斉を逃げ出す。(こういう情けないところも重耳の魅力)
内紛で荒れる晋に、秦の助けで夷吾が入った。しかし、その悪政に民も秦も愛想を尽かす。満を持して、重耳が晋へ…!って、この間19年の流浪、在位9年で没するのである。(このへんまで下巻)

以前『重耳』を読んだときは、その魅力がイマイチよくわからなかった。しかし、今回ようやくそれがわかった気がする。
のらりくらりとしてつかみどころのない重耳であるが、彼をとりまく家臣らを描くことによって重耳自身の魅力が描かれているといってよい。バカ正直にもほどがある兄 申生、利発だったのに歪んでしまった弟 夷吾に対し、目立たない性格で辛抱強い重耳。申生は、太子として期待されたゆえ最高の師、最高の家臣がつけられ、非の打ち所のない太子として身動きがとれなくなった。夷吾は利発であったがゆえに、その利発さを好み礼や義を軽んずる家臣が集まり私利私欲にはしった。そして、重耳にはなかなか家臣が集まらず、師は二流と思われた郭偃がつけられ、一癖も二癖もあるような問題児ばかりが押しつけられる。にも関わらず、重耳も師も家臣もゆるやかに、しかし大化けするのである。これは、称と狐突の選択が素晴らしかったということだろう。ただし、称は図らずも、狐突は図ってのことであったという違いはあるが。

この作品は、上巻は称の活躍を純粋に楽しみ、中巻・下巻は重耳の家臣らの動きをたんねんに追うことでじっくり楽しむのがよいのではないかと思う。なお、介子推や趙衰も登場するので、『介子推』『孟夏の太陽』も読むとなお楽しめる。その後は『楽毅』『奇貨居くべし』と続くのである。途中に『孟嘗君』を挟むのもよい。


2009年06月02日 11:43 [歴史] - No Trackbacks このエントリーを含むはてなブックマーク このエントリーをはてなブックマークに追加 1264

サイト内関連記事 : 宮城谷昌光


コメント

No comments yet

コメントを追加

* コメントにURLを書くとブロックされます。
 (私が気付いたときは解除されることもありますが。)
* スパムブロックのため、コメントの反映に時間がかかることがあります。




TrackBack


* 現在、当方へのリンクがないTBは受け付けておりません。
* 当方へのTBの一覧のリンクはリダイレクトされています。SEO目的のみのTBはあまり意味をなさないと思いますのでご遠慮ください。




この記事へのトラックバックurl:http://www.lacrime.net/action.php?action=plugin&name=TrackBack&tb_id=3298 (右クリックでショートカットのコピーをご利用ください)