コンビニ強盗に失敗して逃げ出した伊藤は、気づくと見知らぬ島にいた。150年前から外界との接触を断ち、日本からも忘れられた島。そして島に古くからある言い伝え――『ここには大事なものが、はじめから、消えている。だから誰もがからっぽだ。島の外からきた奴が、欠けているものを置いていく。』
島で伊藤が出会うのは、妙な人々ばかり。嘘しか言わなくなってしまった元画家「園山」、島の法律として殺人を許された男「桜」、体重300kgで動けなくなり市場に座ったきりの「ウサギ」、ただ一人外界と行き来できる商社マンというにはあまりに熊な「轟」、そして人語を話し過去も現在もそして未来すら知るカカシ「優午」。
そんな島で、伊藤は元恋人の静香に絵葉書を書く。それが静香に届く頃、彼女の元には悪意の固まりのような男「城山」(悲しいことに彼は警官だ)の魔手が迫りつつあったが、伊藤はそれを知る由もない。
メルヘンのように「リアリティのない島」がリアリスティックに描かれる。私たちは丘を渡る風を感じ、鳥のさえずりを聞き、人々の穏やかな生活を見る。そして、そんな中、島中の心の支えだったカカシの優午が殺されるのだ。
けれど、これは犯人捜しのミステリではない。大小様々な謎があって、たしかにほとんどの謎は解き明かされるけれど、そこには名探偵はいない。なぜなら、死んでしまった優午そのものが名探偵だったのだから。だから、やっぱりこれはメルヘンなのだ。それも、とびきりノスタルジックな。
最後に、Amazonの書評から引用。
「こんなミステリは認めない」と異議をあれこれ唱えても、「理由になっていない」と撃ち殺されるだけですので、ここはひとつ、非日常的小旅行を楽しむ感覚で味わってみて下さい。
のんびりできる休日にイチオシの一冊です。